この事業は、地域における有機農業の取組方針や有機農業の生産、加工、流通、消費に関わる取組を取りまとめた有機農業実施計画の策定と、この実施計画の実現に向けた試行的な取組を支援するものである。
事業の進捗状況は、東郷町において、消費者への理解促進のための親子有機野菜作り体験を本年6月から月1回開催するとともに、11月からはスタートアップの人工土壌を活用した露地野菜の栽培実証を開始するなど、順調に取組を進めている。有機農業実施計画については、本年5月に有識者を
委員長とした実施計画策定
委員会を立ち上げて検討を進め、年度内に策定できる見込みである。
次に南知多町では、有機農業スクール設置の参考にするために、先進事例調査を行うとともに、本年5月には
販路拡大に向けて流通業者との連携協定を結ぶなど、順調に取組を進めている。有機農業実施計画については、今月、町長を会長とした実施計画検討会を立ち上げて検討を進めており、年度内には策定できる予定である。
県としては、これらの取組が順調に進むよう、引き続き支援をしていく。
5: 【
福田喜夫委員】
最後に、国では食料、農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させることを目的に、昨年5月にみどりの食料システム戦略が策定され、化学農薬、化学肥料及び化石燃料の使用を抑えることで環境負荷を減らし、カーボンニュートラルや生物多様性の保全、再生を促進し、さらには災害や気候変動に強い持続的な食料システムを構築することが急務であるとしている。
また、この戦略の目指す姿として、2050年までに耕地面積に占める有機農業の割合を25パーセント、100万ヘクタールに拡大するという大きな目標が掲げられている。
そこで、本県の有機農業の耕地面積と、今後の有機農業拡大の取組について伺う。
6: 【
農業経営課長】
本県の有機農業の耕地面積は、2020年度が330ヘクタール、本県全体の耕地面積7万3,700ヘクタールに占める割合は0.45パーセントとなっている。
今後の有機農業拡大の取組としては、さらなる技術の開発と普及、モデル産地の育成、消費者の理解促進が必要であると考えている。
技術の開発と普及としては、農業総合試験場が中心となり、大学やスタートアップと共同であいち農業イノベーションプロジェクトを進め、肥料や農薬の一層の低減やカーボンニュートラルの実現に取り組んでいく。
モデル産地の育成としては、先ほどの産地づくりの取組における先進的な成果を有機農業の推進に前向きな県内の他の市町村にも広めていくことにより、生産から消費まで一貫した地域ぐるみの取組を拡大していく。
消費者の理解促進としては、有機農業で生産された農産物を求める消費者の声もよく聞くことから、生産者と消費者とのネットワークの輪をさらに拡大するとともに、有識者を交えた推進体制づくりを検討したい。
県としては、関係機関や団体と連携して、これらを総合的に推進することにより、有機農業の拡大に取り組んでいく。
7: 【
福田喜夫委員】
有機農業は、県内全域に広げていくことが非常に重要だと思っている。これからも2町の取組を参考にさらに広め、農業が安心・安全な食につながることから、新規就農を含めて県も一層力を入れてもらうよう要望する。
8: 【竹上
裕子委員】
豊橋市内における鳥インフルエンザ発生の防疫対策と、採卵鶏農家支援について伺う。
定期的な維持管理検査の内容、鳥インフルエンザが発生した採卵鶏農場の検査結果、また、農場自身の定期的な自主検査の検査状況、直近の立入検査の時期と検査内容、及びその結果について伺う。
9: 【
家畜防疫対策室長】
定期的な検査の状況は、家畜保健衛生所の家畜防疫員が全ての農場に年1回以上の立入検査を実施しており、国が定めている飼養衛生管理基準の遵守状況を年1回以上確認している。そして、不備が認められた農家に対しては改善指導をしている。鳥インフルエンザが発生した採卵鶏農場については、本年10月に現地を確認しており、飼養衛生管理基準はしっかり守られていた。
鳥インフルエンザを監視するために、県内養鶏場の数か所にモニタリング検査を実施しており、11月14日にサンプリングをして、臨床検査をしたが特に異常が認められないという報告を受けた。
農場自身の定期的な検査状況について、鳥インフルエンザのリスクが高い10月から3月の間に、農場の飼養衛生管理者は鶏舎専用の衣服、長靴を使用しているか、外部から来る車両を消毒しているか等の飼養衛生管理基準の重点7項目を一斉点検することになっており、その結果を毎月家畜保健衛生所に報告するルールになっている。鳥インフルエンザ発生農場についても報告があり、しっかり点検しているという報告であった。
直近の10月11日の立入検査及び11月14日のモニタリング検査において異常はなかった。
10: 【竹上
裕子委員】
鳥インフルエンザ感染拡大防止のための移動制限、搬出制限が豊橋市内のほぼ全域で行われているが、鶏卵もウズラの卵も12月は需要が急増する時期であるため、どのように感染していない鶏卵場から卵や肉の出荷を行っていくのか、今後の鳥インフルエンザ防疫対策を伺う。
11: 【
家畜防疫対策室長】
鶏の生産物は、鳥インフルエンザが発生した農業から半径3キロメートル圏内の農場については移動の制限を受けており、農場で生産された卵、ウズラの遺伝子検査を実施し、陰性を確認した上で、国と協議し、出荷することになる。
1例目の発生の移動制限がかかったところは既に出荷を再開している農場もある。ただし、2例目は検査中で、出荷待ちの状態になっている。
また、半径3キロメートルから10キロメートル圏内の搬出制限は、12月5日に速やかに協議をかけ、既に国と協議済みであり、現在、通常どおり出荷している。
12: 【竹上
裕子委員】
今回の採卵鶏農家が経営再開するための具体的な支援策を伺う。
13: 【
家畜防疫対策室長】
発生農場の再開については、国から殺処分に対する補償の手当金が交付される見込みである。ただし、この交付金の試算に時間を要することから、その間のつなぎ融資として、低金利の農業制度資金や、日本政策金融公庫資金などが利用できる仕組みになっている。
農場の経営再開に対してしっかりと支援をしていきたい。
14: 【竹上
裕子委員】
今回、鳥インフルエンザが発生した原因は判明しておらず、農家が一生懸命防疫対策に心を砕いても発生してしまう。万全な防疫対策を農家と共に検討して実施してほしい。
15: 【
横井五六
委員】
新規就農支援事業について伺う。
JAあいち海部では、昨年度からいちご新規就農支援事業を立ち上げ、イチゴの新規就農を希望する新規就農者を研修生として受け入れ、2年間、受入れ農家の下で実践研修を行いながら、独立に向けた支援を行っている。
当産地のあまイチゴ組合は、現在、組合員数が63人、総面積約16ヘクタール、販売金額約10億円の産地であり、昨年度には日本農業賞の特別賞を受賞している。
しかし、今後10年先を見据えたとき、高齢化、後継者不足により、組合員数40人、販売金額約6億円まで産地が縮小することが予測されている。そのため、毎年、新規就農希望者を募集し、産地規模の維持に努め、10年間で10人の新規就農者をあまイチゴ組合に定着させる目標を立てている。研修期間の2年間で栽培技術を習得させることはもちろん、研修終了後にスムーズに独立就農ができるように、農地の確保、空きハウスのあっせん、住居の確保も同時進行で行っている。
特に問題なのが空きハウスのあっせんであり、現在研修中の研修生1人に対して、空きハウスをあっせんすることはできるが、今後も必ずあっせんできる保証はない。また、新規で高設栽培ハウスを建設するとなると、鉄等の資材価格及び人件費が高騰しており、20アールで約5,000万円の初期投資が必要となり、新規就農のハードルを非常に高くしている。
少しでも初期投資を抑えるため、今後も新規就農者には空きハウスのあっせんをしていくことになるが、次に問題となるのはハウスの改修費用である。古くなった部材の交換やフィルムの張り替えなどを行うことは必須であり、それだけでも多額の初期投資が必要になる。また、他の品目で使用してきた空きハウスは、1,000万円程度の改修費用が必要となることもある。
このように、新規就農者にとって負担の大きい経営開始時の機械、施設等の導入を支援するための制度について伺う。
16: 【
農業経営課長】
国が本年度から始めた新規就農者育成総合対策において、新規就農者の早期の経営発展に必要な機械や施設等の導入に対する支援を行う経営発展支援事業が新たに創設された。
この事業は、機械や施設等の取得、改良、リース、家畜の導入、果樹やお茶の新植、改植、農地の造成、改良などが補助対象になる。補助対象額は1,000万円が上限で、国が2分の1、県が4分の1を補助するため、残りの4分の1の自己負担で初期投資を行うことができる。
ただし、経営開始から3年間、年間150万円の交付が受けられる経営開始資金を併せて受給する場合は補助対象額の上限が500万円になる。
なお、この事業を活用できるのは就農初年度のみで、例えば本年度事業の交付対象者は、本年度中に50歳未満で独立自営就農をした認定新規就農者に限られる。
17: 【
横井五六
委員】
本年度から新たに経営発展支援事業が創設され、新規就農者の初期投資を支援していることは承知した。
しかし、経営発展支援事業は就農初年度しか使用できないとのことであり、初めは露地野菜で就農して徐々に経営を発展しながら、空きハウスを借りて改修したり、新規でハウスを建設しようとする人には使いにくい。他に経営の初期段階で投資の軽減を図るために活用できる助成はないか。
18: 【
園芸農産課長】
経営の初期段階で投資の軽減を図る助成制度であるが、国事業では産地生産基盤パワーアップ事業のメニューの一つである生産基盤強化対策において、新規就農者や担い手への継承に必要な園芸用ハウス等の再整備や改修を行うことが可能である。
この事業を実施する場合、産地を設定して、総販売額、総作付面積の維持または増加を成果目標とし、農家ごとでは生産コストの低減や労働生産性の向上など、成果目標を設定する必要がある。
また、県単独補助事業であるあいち型産地パワーアップ事業においても取組が可能で、新規就農者が園芸用ハウスなどを新設する場合、加算ポイントを付与し、取り組みやすくしている。昨年度には、新規就農者が新設する園芸用ハウスや祖父から譲り受けた園芸用ハウスを改修した事例がある。今後とも、国や県の事業を活用しながら、経営の初期段階での投資を軽減できるよう支援していく。
19: 【
横井五六
委員】
現状では県内の農業協同組合(JA)単位で新規就農支援事業を立ち上げ、運営をしているが、JA単位で支援できることは限られており、支援の内容にもばらつきが生じる。今後、支援事業を10年、20年と存続させ、農業者を確保していくには多大な労力と費用がかかり、JA単位での継続的な事業運営は困難となることが予想されている。
JA単位での運営を継続していくために、各JAの新規就農支援事業に対する助成や支援について伺う。
20: 【
農業経営課長】
国が本年度から始めた新規就農者育成総合対策において、地域の関係機関が連携して行う新規就農者支援の取組をサポートするサポート体制構築事業が新たに創設されている。
この事業は、就農相談体制の整備、先輩農業者等による技術面等のサポート、研修農場の整備を国が2分の1を補助する事業であり、事業実施主体には、市町村、協議会、JA等がなることができる。
就農相談体制の整備は、就農希望者や新規就農者からの相談に対応する就農相談員を設置することができ、先輩農業者等による技術面等のサポートでは、先輩農業者等を就農支援員に選定して、新規就農者に対して、栽培技術、経営に関する相談や販路に関する相談など、経営確立に向けた支援を行うことができる。
また、研修農場の整備では、就農希望者が実践的な研修を行うための農場や施設を整備することができ、研修を終えた就農希望者にリースすることもできる。本年度は県内で1件、JAによる事業の利用があり、座学を行う研修室や選別・出荷作業を行うための倉庫がこの事業で整備されている。
なお、就農相談体制の整備と先輩農業者等による技術面等のサポートは、補助対象額の上限が1地区当たり100万円であるが、研修農場の整備には上限はない。
21: 【
横井五六
委員】
本県農業を維持、発展させるためには、新規就農者を確保し、担い手として育成していくことが重要である。国の新規就農者育成総合対策の中には、研修中及び農業経営開始直後に1人当たり年間150万円が交付される就農準備資金や経営開始資金もあり、研修中で収入がない時期や経営開始直後で収入の少ない時期の生活費や初期投資資金としても役立つものであり、よい制度だと思う。
ただし、これらの資金については、前年の世帯所得が600万円を超えていると交付されないと聞く。研修中は無収入にもかかわらず、前年の世帯所得が多かったという理由で交付されないのであれば、農業を始めたくても研修をためらう人も出てくるし、新規就農者の確保に支障を来すことになる。このことは、経営開始資金についても同様である。
そのため、この前年の世帯所得600万円の要件の緩和を、県としても国に要望するようお願いする。
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